「やまんばの里山だより」では、この1年間、荒れた里山を再生し、豊かに生き物が暮らす森を甦らせるにはどうすればよいか、そのヒントをつづってきました。また、森を守るとは、森の働きを高めることであり、私たちに何ができるかを考えてきました。
里山では今、暗い森がどんどん増えています。暗い森に生き物は多くすんでいません。多種多様な生き物が暮らすところは、食べ物となる様々な種類の植物が生えることができる明るい森です。高度経済成長の頃から、自然を守る運動が盛んになり、木を伐ることは環境破壊であるとされてきました。しかし、木を全く伐らずに40年もたった里山はどんどん荒廃した姿へと変わってしまいました。人が手を入れてきた森は、人が関わらなければダメになってしまうことがわかったのです。このようなことは、日本人がこれまで経験をしたことがありませんでした。日本の歴史をふりかえると、生活の燃料を得るために木は伐ったけれど、伐りすぎずに上手に森を再生させる知恵がありました。そして、その場所でずっと住み続けていくためには、資源を守りながら活かすルールもありました。今でいう持続可能な森の活用が行われてきたのです。今、問題になっている絶滅危惧種の生物は、里山にこそ多いのです。
やまんばの会では、森の資源を使うために、枯れた木や不用な木を伐ります。明るい森になったことで、結果として豊かな森が甦ってくるのです。便利な暮らしを捨て、あえて昔のような暮らしに戻ることはできません。しかし、暮らしとどれだけつながることができるか、ということが大切です。自分が森で何かを実現したいところから全てが始まります。例えば、ハンモックをつるして寝たければ、草をかって風通しをよくしようと考えます。そう、自然と「下刈り」ができます。また、カブトムシがいっぱいいる森にしたいと思えば、落ち葉を集めて腐葉土をつくります。そう、「落ち葉かき」ができます。自分のやりたいことを実現することで、自然と森が再生する。これが、暮らしに里山を取り戻そうという仕組みです。 楽しみながら続ければ、健康づくりにも効果があります。そこには生物多様性と多種多様な人々の関わりあいが生まれてきます。