里山協定林とは
NPOと行政の協働による森づくり
滋賀県の琵琶湖森林づくり県民税を活用した事業の一環として、2006年からスタートした里山整備プロジェクトです。
ここ、おきなが協定林はエントリー方式により県内に11箇所設定された里山協定林の一つです。
やまんばの会・日光寺子ども会・米原市とが、計画づくりから森林整備、里山の活用に至るまで、役割を分担しながら、数年間にわたり森づくりを展開します。
おきなが協定林の特徴は、里山の保全活用と遺跡の保全を一体的に行うものです。この山の稜線沿いには、5~6世紀頃に豪族・息長氏が造ったとされる古墳が連続してのこされています。以前より、教育委員会と大手前大学により共同で発掘調査が行われてきました。私達は、地域の宝であるこれらの古墳を木材チップで覆うことで保全したいと考えました。そこで、明るい里山にするために伐採した不用木をチップ化し、これを遺跡の保全に役立てるのです。
森林整備はふたつの手によって進めます。まず、面的に大きな成果を上げつつ、マツクイムシによる枯れ松伐採などの危険な作業は、米原市が委託した森林組合の手によって行っています。それと並行して、市民による保全活動として、やまんばの会と日光寺子ども会、地域のさまざまな団体が関わり、楽しみながら里山整備を行っていきます。
進め方
どうやって進めるの
樹木のチップ化 と モノレールによるチップの運搬
おきなが協定林は、標高は低いのですが、稜線に至るまでの傾斜は大変な急勾配です。遺跡の保全に用いるチップを稜線沿いまで上げるために車道をつけるとかえって森を荒らしてしまいます。とはいえ、人力でチップを大量に運ぶことは非現実的です。そこで私達は、麓で作ったチップを運搬するモノレールを設置することにしました。モノレールを用いることで森林を荒らすことなく、里山の保全と遺跡の保全を両立させていきたいと考えています。
これまでのようす
ここまで進みました
風とおる竹林に
やまんばの会、日光寺子ども会、ガールスカウトをはじめとする様々な団体が関わりながら、すそ野に広がる竹林の手入れを精力的に進めています。竹林はなかなか手ごわい存在です。1回や2回の間伐では成果は見えません。明るくなったところから次々と竹が生えてくるのです。年間を通したボランティア活動により、少しずつですが、ようやく風が入りはじめました。
林内作業車を導入
モノレール軌道の起点でチップ化作業を行いますが、そこまで材料となる丸太や竹を運ばなくてはなりません。軽トラが走れない狭くて急な道を林内作業車が走り、附属のワイヤーで倒した木と竹を引きずり出します。これを適当な長さに切り荷台に載せて運び出します。
不用な竹と木はチップにします
里山整備によって生まれた大量の不用な竹や木はチッパーを使ってチップにします。
モノレールの設置
計画していたモノレールをようやく導入することができました。まず、2008年3月にメインルートとなるモノレール軌道を設置しました。これで遺跡の最も南側にチップを搬入することができるようになりました。このまま北方向に軌道を延長して古墳全体へのチップ搬入を考えましたが、裾野付近の森林整備エリアとの関係から、もう一本サブルートを設ける方が効率的な作業ができます。2008年夏にはサブルートの軌道整備も完了したところです。
これにより、里山協定林を整備することによって生まれた大量の不用木を運び出してチップ化し、それを稜線までモノレールで運び上げるという一連のシステムが出来上がりました。
古墳保全のため竹チップを散布
伐った竹や木のチップで稜線に連なる古墳群の上を覆い保全しています。
マルチング効果によって、古墳周辺の土が流れないと同時に草がはえません。また森林化することも防ぎます。発掘調査を終えた息長氏の古墳は地域の宝であり、ここに古墳があることをしっかりと認識されることが大切だと考えています。
そのため、全てを森にするのではなく、かつてこの地域で営まれていた森と人との歴史を明確にしようという試みです。